パンタナルは南アメリカ大陸のほぼ中央部に位置する、世界最大級の熱帯性湿地である[1][2][3]。
パンタナルの名前の由来は、ポルトガル語の「pantano」(日本語では、沼地を意味する)である。水文学、地質学、生態学の側面においてパンタナールは特異な性質を持つ。1982年のRADAMBRASILにおいて、パンタナル地域には12種類の生態系が存在していると定義されている[4]。
大部分がブラジルのマットグロッソ州とマットグロッソ・ド・スル州に所属し、一部がボリビアとパラグアイにまたがる。総面積195,000平方キロメートルであり[4][5]、そのうち1,878平方キロメートルが2000年に「パンタナル自然保護地域」としてUNESCOの世界遺産に登録された。また、ラムサール条約の登録地でもある。
雨季の間、パンタナルの80%以上が水没し地球上で最も水量が多い平原と化す。
生態学
乾燥と洪水を季節的に繰り返すパンタナルのような生態系を洪水平原生態系と定義する[4]。具体的にはこの生態系は水が溢れる洪水の段階から元々あった土壌の高さまで水位が下がり、乾燥状態になっていることを繰り返す。土の状態で説明すると砂から粘土、シルト状態になる。
パンタナルは、海抜80メートルから150メートルに広がる平原地帯である[4]。1986年のCafavid GarciaとCastroの観測によると、11月から3月の間に1,000ミリメートルから1,500ミリメートルの降水量が観測される。パンタナルを流れるパラグアイ川の水位は、季節的に2メートルから5メートルの間で上下する。パンタナールのそれ以外の場所での水位の変化は、これよりも小さい。溢れ出した水の速度は非常に遅い。その理由は、植物が密生しているためである。このことは、1995年のHamiltonと研究に基づく[4]。
地理
パンタナルは、巨大で緩やかな傾斜がついた平原である。傾斜が緩やかなことにより、高原地帯から流れてくるパラグアイ川とその支流の水を急速に失うことなく、ゆっくりと平原から流れ出す。
パンタナルは西と北西をブラジル・ボリビアの国境に位置するチキターノ熱帯乾燥林(en)に、南西と南をグランチャコと接することで区切られている。パンタナルから北、東、南東部にはセラードが広がる。
年間の降水量は1,000から1,400ミリメートルであるが、パンタナルの水資源を供給するのは高原地帯から流れ出すパラグアイ川である。気温は年間平均で摂氏25度であるが、年間の寒暖の差は0度から40度までと大きい。
植物相
パンタナルの植物相は、「パンタナル・コンプレックス」と言及されるほど多様である。パンタナルの植物相には典型的なアマゾン熱帯雨林において植生する樹木、ブラジル北東部の植物、ブラジルにおけるセラード、パラグアイ、アルゼンチンにおけるチャコと呼ばれる地域に生える灌木群も観察することができる。森林は標高が高いところでは一年中生い茂る一方で、草本は水浸しになった場所で季節的に生えるのみとなっている。草本の生育が季節的に限定される理由は繰り返される洪水によって生育が阻まれることも一因としてあるが、より重要なのは乾季の間の水が不足することにある。
Font: ウィキペディア パンタナル